どこから考えれば良いの?脳卒中リハビリ3つの基本

今回は、基本となる脳卒中リハビリについて書きたいと思います。
早速ですが、脳卒中リハビリはどんなイメージでしょうか?
脳の一部が損傷され、それに伴って様々な症状が出現して、それに対してアプローチしていく…
そのようなイメージかと思います。
例えば、トイレ歩行に、中等度介助を要する症例を担当したとします。
歩行中に支えることや、トイレ内で下衣操作に介助が必要なわけです。
介助が必要になっている原因を考えて、リハビリしていきます。
しかし、原因を考える際、半側空間無視や注意障害、運動麻痺など複合的であることを経験します。
複合的なものから目をそらしてしまうと、客観的な評価が求められているにも関わらず、知っていることやわかる範囲で対処しがちです。
本当は向き合うべきと分かっているのに、どうしてそう考えてしまうのでしょうか?
脳卒中リハビリを考える基本となる部分がないことが一つの原因だと思います。
そこで、今回は脳卒中リハビリを考える上で基本をおさえてみたいと思います。

脳卒中リハビリ
脳卒中リハビリ

目次

脳卒中リハビリの基本3項目

  1. 着目すべき動作を知る
  2. 脳を知る
  3. 脳卒中片麻痺で生じやすい運動器を知る

1.着目すべき動作を知る

脳卒中リハビリを考える上で最も大切なのは、どこに着目すべきかを明確にすることです。
これは、関節可動域や運動麻痺などの機能障害レベルのことを言っているのではありません。
動作レベルです。
どの動作をリハビリしていくのか、リハビリをした結果、どの動作が良くなるのかを明確にするのです。
「それは当たり前でしょ!」
と言うヒトもいると思いますが、意外とできていないです。

参加→活動→機能という流れで考えて、この活動と機能の間に、動作を入れてください。
参加→活動→動作→機能といったイメージです。

具体例を挙げると、
参加:近くのスーパーに買い物に行く
活動:荷物の持ちながら歩行
動作:歩行→単脚立脚期(荷物を持つと、単脚立脚期でふらつくため)
機能:股関節周囲筋の筋力低下

この動作を間にはさむことで、良くすべき動作(例では単脚立脚期)を確認できます。漫然と活動レベルの歩行練習をしたり、機能レベルの筋力トレーニングをすることを防ぐことができます。
動作から機能に掘り下げ、そこをリハビリで良くしていく仮定は難しいです。
ただ、少なくともみているポイントの間違いが減ると思います。
みているとこも、実際のリハビリも両方も混乱すると、どこがわかっていないのか混乱するでしょう。
そういった意味でもみているポイントがわかるだけで、あとは「自分の技術の問題だ」と修正することができるのです。

2.脳を知る

脳卒中の患者さんをみるときに必須です。
運動麻痺や感覚障害、それらの症状が起きている原因は、どこにあるんでしょうか?
そうです、「脳」です。
原因に対してリハビリを実施していると思います。
例えば、膝が痛い患者さんへのリハビリを行う際、膝の痛い原因を探して、膝蓋下脂肪体が原因だと評価できたとしましょう。
膝蓋下脂肪体に対してアプローチしますよね?
それと脳卒中リハビリも同じです。
脳のどの部分が損傷して現在の症状が起きているかを探索しない限り、原因に対するアプローチとはならないのです。
では、脳はどうやって確認するのか。
それは、脳画像をしっかりとみることです。
ただ、漫然とみても解決しません。
現在の症状が起きている原因が脳のどの部分にあるのか、そういった視点で脳画像をみてみましょう。

脳画像がみれない環境の場合はどうするか?
極力みる努力をしましょう。
現在は、病院でMRIデータをディスクにコピーして患者さんにわたすことができます。
そのため、極力データを患者さんから見せてもらうことに尽力すべきです。
だって、そこに原因が隠されているのです。

それでも、脳画像が手に入らなかった場合。
推察しましょう。
診断名や、発症からの経過、現在の症状など。
様々な神経学的初見を評価し、これは脳からきている症状なのか、そうではないのかを判断するのです。
特に、生活期では往々にして「廃用」が隠れています。
「既往歴に脳梗塞があるから、脳の影響で…」
みたいなことは、専門家ではないですよね。
脳画像をひたすらみて、脳に詳しくなる。
その上で、実際の所見から予測できる能力になるのです。

3.脳卒中片麻痺で生じやすい運動器を知る

脳にだけ、詳しくなってもリハビリの効果はでません。
それは、なぜか?
原因は脳にあるが、療法士が介入できる部分は運動機能の部分であるから、です。
そのため、運動器を良くする能力も求められます。
ここが、脳卒中をみる上で混乱するポイントです。
脳だけ詳しい療法士が、実際には関節を動かすのが下手クソみたいなことがあったり、運動器だけ詳しい療法士が、力学的視点のみで患者とのやり取りにギャップがあった、みたいなことが起きてしまいます。
そのため、脳を知った上で、運動器を知る必要があるのです。

脳卒中の歩行を膝関節のパターンで3つに分類した報告があります。

Extension Thrust Pattern,Stiff-Knee Pattern,Buckling-Knee Pattern


A. KRAMERS DE QUERVAIN,1996

簡単に言うと、歩行中に膝が過伸展するパターン、膝が屈曲位で固まっているパターン、膝折れするパターンに分けられています。
膝の動きは違いますが、この3つの歩行で共通した動きがあります。
共通した動きを知ることは、とても重要です。
前述の通り、脳卒中の症状の複雑さが難しく感じさせます。
ただ、その中で共通した動きを知ることで、問題点がシンプルになります。
それが、運動器を改善することのポイントの一つです。
では、実際のパターンにうつります。
膝の動きは違うのですが、共通した動きとはどこのなにか?
「体幹の前傾」です。
膝の動きは違うにも関わらず、体幹は前傾するんです。
実際の臨床場面でも、体幹が前傾しないように歩行介助すると、膝のパターンが変化します。
ということは、療法士として「体幹の前傾」に対してアプローチすることは優先度が高い可能性がでてきます。
腰椎が伸展するか、股関節が伸展するか、抗重力伸展活動によって体幹を伸展させることができるか、股関節の伸筋群は活動するか、など。
こういった現象を運動器として知って、よくできるかが、とっても重要です。
生活期の脳卒中リハビリ、まだまだ奥が深いです。
一緒に考えていきましょう。

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投稿者プロフィール

實 結樹
執筆監修

一般社団法人日本リハフィット協会 代表理事

国家資格(理学療法士取得)

脳卒中認定理学療法士

総合病院に10年勤務後、

埼玉県桶川市→上尾でリハビリ施設設立 5年目

2018年に日本離床学会で最優秀演題賞を受賞

臨床とビジネスの双方から挑戦を繰り返している

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