理学療法士に将来性はない?!将来を不安に感じる理由3選

理学療法士は、魅力的なお仕事です。
魅力的なはずなのに、近年は将来性を不安視する声が聞こえてきます。
将来性を不安視する声によって、不安に思っていなかった療法士へも不安の連鎖が起きています。

目に見えない不安ほど恐ろしいものはありません。
本記事では、将来を不安に感じる理由に焦点を当て、理学療法士の将来への不安に対する問題点をさぐっていきます。

現在、自分の将来について不安に感じたり悩んでいる療法士にとって、問題点を見つけるキッカケになればと思います。

本記事は、以下のような人に向いています。
✅ 将来、療法士になろうと考えている。
✅ 療法士として、将来に不安を抱えている
✅ 今の働き方をずっと続けていけるか不安
✅ 周りは色々と活動していて、自分との差に焦りがある
✅ 療法士は安定していると思っていたが、安定していないのかと心配

まずは、療法士の数の現状をみていきましょう。

療法士の数は余るって本当?

引用:理学療法士・作業療法士需給分科会(厚生労働省)

平成31年の厚生労働省の資料によると、2025年をこえたあたりから、すべてのケースで理学療法士・作業療法士の供給が需要数を上回ると報告されています。
カンタンに言うと、想定される主な分野では不要な理学療法士・作業療法士がでてくるということです。(上グラフ)

商売は、その商品がほしい顧客と、その商品の数で成り立ちます。
新型肺炎コロナウイルス感染拡大を受け、マスクの価格が高騰したのは記憶に新しいと思います。
マスクがほしい顧客はたくさんいましたが、マスクが少なくなったからです。

療法士の世界でも同じです。
リハビリを受けたい顧客の数は変わらなくても、療法士が増えれば、売れ残る療法士はでてきてしまいます。
療法士の場合、制度の壁(リハビリ期限や上限)もあり、リハビリをもっと受けたい顧客がいても、提供量を増やすことができない複雑な背景もあります。

終身雇用が守れなくなったと言われている現在、将来を心配することはある意味自然なことです。
逆に、病院や施設にいるから一生安泰だと思っている方が、危ないですよね。

療法士が将来を不安に感じる理由は、3つ考えられます。

①療法士の資格にしがみつくから
②療法士になることを目標に大学に入るから
③一部の売れっ子療法士に多大なる影響をうけるから

以下で、詳しく説明してきます。

理由①療法士の資格にしがみつくから

療法士の資格にしがみつく
療法士の資格にしがみつく、とは?

理由の1つ目は、療法士の資格にしがみつくからです。
療法士の資格にしがみつく、とはどういう状態でしょうか?

例を挙げてみます。
「私は理学療法士の資格を活かしてフィットネスで働く!」
一見、希望を持った将来に感じますよね?
ただ、ここに最も注意すべき点が含まれます。

「理学療法士の資格を活かして」
この考え方こそ、療法士の将来を狭めています。

療法士の資格を活かす、とは?

療法士の資格を活かすは、狭義の意味で「療法士に関係のある仕事をする」ということになります。
例のフィットネスジムで働くことは、まさしく関係のある仕事です。

コレ自体は悪いことではありません。
国家資格を活かすことは大変有効です。

注意すべき点は、療法士の資格を活かすのを前提に、将来を考えてしまっていることです。
手段と目的が逆になってます。

療法士は資格の一つに過ぎず、一人の人間であり、人生があります。
一人の人生の中で、療法士の資格は通過点であるわけです。

人生の目的を達成するために、療法士の資格があるのです。
例の「私は理学療法士の資格を活かして、フィットネスジムで働く!」では、療法士の資格を前提としていることが問題です。
フィットネスジムで働きたくて、理学療法士の資格を活かすが、将来のための考え方です。
考えの順序を変えるだけで、見えてくる可能性は大きく広がります。
今一度、手段と目的を見直してみましょう。

これは分かったとして、なぜ、療法士の資格にしがみついているのでしょうか?

なぜ、療法士の資格にしがみつくのか?

先程も述べたとおり、多くの療法士は、資格を前提として将来を設計していると思います。
なぜ、資格を前提としてしまうのでしょうか?

理由として、頑張って国家資格をとったから、が大きいでしょう。
療法士になるには、養成校に入って、3〜4年勉強して、実習を乗り越え、国家試験に合格して資格をとることができます。
大学・専門受験から国家試験まで、一生懸命勉強する必要があります。

学費も時間も、たくさん使ってとった療法士の資格。
せっかくとったこの資格を誰だって無駄にしたくありません。
そんな背景から、療法士の資格をベースとした人生設計をしてしまうのかと思います。
簡単に言うと、療法士の資格を活かすことを、焦っている状態です。

焦らないで成功するわけない!という意見もあると思うので、勉強したことを焦らずに活かして成功した事例をご紹介します。

iPhoneを作った超有名企業のアップルの創業者である、スティーブ・ジョブズ氏のお話です。
アップルはMacのコンピュータでも有名で、Macは美しいフォントが特徴です。
美しいフォントをジョブズ氏が生み出したお話です。

ジョブズ氏は大学を退学したあとも、カリグラフ(書法)の授業に忍び込んでいたそうです。
その時は、その書体が美しく興味があったから忍び込んで聞いていたそうです。
それが10年後、Mac(Macintosh)をデザインしているときに、ふとそのカリグラフを思い出したそうです。

授業を受けているときにはどう使えるかは想像もできなかったことが、10年後アップルのコンピュータを表す特徴として組み込まれているのです。
ジョブス氏は点と点がつながったと表現しています。

スティーブ・ジョブス氏 スピーチ

スティーブ・ジョブズ氏の言葉を借りるなら、療法士の資格も、一つの点であるはずです。
なので、今ムリして療法士の資格を使わなくてもOKだと思います。
それくらいの感覚で考えてみると、むやみに療法士の資格にしがみつく必要はなくなるでしょう。

つづいて、理由②の療法士になることを目標に大学に入るから、です。

理由②療法士になることを目標に大学に入るから

療法士は大学内で当たり前だけど、療法士になるためのことを習う

理由の2つ目は、療法士になることを目標に大学に入るからです。
多くは、高校卒業後、大学または専門学校に入って、療法士の道に進みます。
高校時代の多くは、「療法士になる」という目標があって、大学に入ると思います。
ほとんどの学生がどんな働き方をするかまでは、考えていないと思います。

学校に入ったあとは、将来のことを考える暇はなく、勉強やテスト、実習、卒業研究、国家試験対策…に追われる日々。
就職先を考える時間もなく、お世話になった実習先や興味がある分野(整形外科、脳卒中など)が担当できそうな病院へ就職する。
振り返ると、こんな感じではなかったですか?
私は、まさしくそうでした。

学校の授業でも、療法士になるための授業や進路指導はあるものの、将来の働き方のアドバイスは療法士をベースに進路指導されます。
今の教員のほとんどが、療法士として働いて(修士や博士を持って)、教員になっています。
療法士以外の働き方を知りません。

学校の役割も、実習を乗り越え、国家試験を受かることです。
親も、本人も、教員も、国家資格をとることを求めています。
これは、ある程度仕方ないです。
国家試験には落ちるけど、将来の人生に役に立つことをたくさん体験できる、だと学生は集まりません。
(おもしろそうですが)

なので、療法士になるために学校に入って、療法士になるための勉強や進路を考えるので、療法士になって数年経ってからふとこのままで良いのかなと不安になるのです。

対策としては、療法士で外の世界で働いているヒトや、全く違う業種のヒトと交流を持つことです。
学校の先生が教えてくれないことを、たくさん学べると思います。

つづいて、一部の売れっ子療法士に多大な影響をうけるから、です。

理由③一部の売れっ子療法士に多大な影響をうけるから

講師として毎週ご登壇している先生
療法士として講師をすることにあこがれてしまいます

理由の3つ目は、一部の売れっ子療法士に多大な影響をうけるから、です。
資格は同じ療法士なはずなのに、キラキラしている療法士は一人くらい挙げられると思います。

毎週のように学会・講師活動で、色々な場所で活躍されているあの先生。
最近では、パーソナルジムを起業して予約2ヶ月待ち!みたいなのを公言している先生。
彼(彼女)らをみると、自分とのギャップに将来が不安になると思います。

なぜ、不安になるのでしょうか?
それは、彼らの活躍の仕方だと思います。
講師も、パーソナルジムも、療法士を極めた先にあるものです。
療法士を極めて、その上で活躍する(稼ぐ)のが王道のような感じがしてしまいます。
これが不安の正体です。

自分は療法士を極められるのか?
極めるほど、療法士という仕事にやりがいを感じているのか?
そう感じている方は、王道で活躍している療法士との差をどんどん感じます。
差をどんどん感じることで、自分の将来が不安に思えてきます。

療法士を極めず、療法士に関係ない部分で収益を上げることに、なぜか嫌悪感をいだいていませんか?
自分がそう思っていることが、王道を進んでいる療法士をみて不安に感じる理由だと思います。

お金・稼ぐ
提供した価値の対価としてお金をもらう。

例えば業務外で、Uber eatsで働いている同僚Aさん。
アナタはどう思いますか?
ここに引っかかりを感じるのであれば、まずは考え方を見直してみましょう。

療法士はあくまで通過点なので、極められなくても、なんの問題もありません。
自分の人生です。
一度、真っ白な気持ちで考えてみましょう。

まとめ-療法士は人生の一部だと考える-

本記事では、療法士は将来を悩む理由を考えてみました。
1つ目は、療法士にしがみつくから。
2つ目は、療法士になることを目標に大学に入ったから。
3つ目は、一部の売れっ子療法士に多大なる影響を受けるから。

療法士の資格をとったから、療法士として一生生きていく必要なんて一ミリもありません。
療法士として病院で働くことに不安を覚えるなら、他のことに挑戦すれば良いのです。
療法士ありきの人生でなく、自分の人生を生きてみてください。
その上でやっぱり療法士がやりがいであれば、どんどん療法士として磨いていけば良いのです。

療法士として不安であれば、一度立ち止まってみてください。
世界は広いです。
できることだらけです。
アナタの挑戦を、応援しています。

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投稿者プロフィール

實 結樹
執筆監修

一般社団法人日本リハフィット協会 代表理事
国家資格(理学療法士取得)
脳卒中認定理学療法士
促通反復療法「川平法」認定施設

総合病院に10年勤務後、
埼玉県桶川市→上尾でリハビリ施設設立 5年目

2018年に日本離床学会で最優秀演題賞を受賞

臨床とビジネスの双方から挑戦を繰り返している

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