医師が近くにいない環境でのリハビリ!リスク管理のポイント

訪問リハビリや自費リハビリを行う際に、近くには医師はいないです。
医師が近くにいる環境では、有事の際にすぐに医師が対応してくれます。
大きな変化ではなくても、気になった際にその場で確認してもらえます。

ただ、訪問リハビリや介護予防体操、自費リハビリの際には近くに医師はいません。
医師が近くにいない分、関わる医療従事者のリスク対応力が求められます。
リハビリを効果的に行うには、安全を守ることは再優先事項だからです。

リスク対応力とは、有害事象*が起きないことのみを指しているものではありません。
(*有害事象:リハビリを行った被験者・患者に生じる、リハビリの内容等に関連した、好ましくないまたは意図しない事柄のこと。例:歩行練習中に転倒すること)

有害事象を起こさないように注意することは大切です。
一方で、有害事象が起きてしまったあとに対応できる能力も求められます。

有害事象が起きないように起きないように考えていると、ちょっとした変化があっても、
「これは気のせいかな?」
「きっと大丈夫だ」
と思ってしまいます。

この思いは、正確な判断を鈍らせることにつながります。
大丈夫と考えるのではなく、逆に危ないかも?という思考が大切です。
「いつもと違うな。〇〇かな?」
こう考えられると、有害事象が起きたあとでも、冷静に対応することができます。

対応できる能力も大切だという例を挙げます。
例)リハビリ中に呂律障害、運動麻痺が出現
例の症状がでれば、脳梗塞を疑って、救急車を呼んで病院に行くべきです。
いち早く治療を行うことで、命を守ることや後遺症を残さないようにできます。

例の症状が起きたときに、有害事象が起きないように考えていると、
「眠れてなくて口がまわってないんだ。」
「今日は力が入りづらそうだったから、次回確認しよう」
と勝手な解釈をしやすいのです。

生活期のリハビリが脳梗塞の直接の原因になることはないです。
つまり、たまたまリハビリ中だったから、脳梗塞発症を早く発見できたんだ!と考えることができます。

医師やチームでリスク対応

本記事では、万が一を想定した動きと、それを踏まえた上でのできる範囲でリスク管理方法をご説明しています。

こんな方へオススメの記事です。
✅ 医師がいない環境でのリハビリが不安。
✅ 生活期でのリハビリではリスク管理はどうするの?
✅ 万が一、状態変化が起きたら、どのように対応するのか知りたい。

最悪の事態を想定する

リスク管理は、これに尽きると言っても過言ではありません。
症状や主訴があった時に、最悪の事態を想定できるかが、その後の対応に重要です。

例の脳梗塞の症状の時に、呂律障害と運動麻痺で脳梗塞ではないのか?という最悪の事態を想定していたから、患者さんのピンチに迅速な対応につながったのです。
ここでは、症状や主訴から想定すべき最悪の事態を載せています。

1.呂律障害、運動麻痺

例でも挙げたように、脳梗塞(脳卒中)を疑いましょう。
脳梗塞かを見るために、FASTと呼ばれる評価があります。
最低限、FASTは頭に入れておいてください。

F(Face:顔)、A(Arm:腕)、S(Speech:言語)、T(Time:時間)の頭文字をとったものです。

F:顔の麻痺

FとAにおいて特徴は、片側に生じていることです。
Fでは、顔面の麻痺です。
眼瞼下垂や、口角下垂、舌の片側偏位が生じていないかをチェックします。

A:腕の麻痺

Aでは、腕の麻痺です。
分かりづらい場合は、目をつぶって両上肢を90°挙上した位置でとめてもらう、バレー徴候をチェックします。

S:言語障害

Sは、呂律障害と言葉の障害です。
言葉が話しづらかったり、こちらの言っていることを急に理解できない(ウェルニッケ失語)やきちんとした言葉で言えない(ブローカ失語)症状がないかを、チェックします。

T:時間

Tは、時間です。
発見した時間からできるだけ早く病院へ行く必要があります。
ここで大切なのは、絶対に救急車を呼ぶことです。
もう一度いいます。
絶対に救急車を呼んでください。

これは、脳卒中の救急診療の特徴で、救急車で脳卒中が疑われる場合は、脳卒中ホットラインと言われる専門病院へできるだけ早く送る流れがあります。
一方、タクシーや家族などの自力で救急外来を来院する場合、すぐに診察できない場合があります。
これはシステム上どうしようもないので、間違いなく救急車を呼んでください。

脳梗塞救急車救急隊

2.身体の痛み

痛みでは、骨折を疑いましょう。
万が一、骨折していれば、リハビリをすることで骨折部位の悪化をもたらす可能性があります。

とても強い痛み、明確な骨の痛み(打診)、骨折部位を動かすことによる激痛、がみられる場合は、骨折の可能性があります。
また、明確な転倒などの明確な受傷起点があることも、骨折の可能性をより高くします。

もう一つ重要なポイントは、骨折しているかの評価は、整形外科の専門医であってもレントゲンが診断の基準となります。
(日本整形外科学会HP参照)
骨折を否定するのは、整形外科医がレントゲンやCTを撮ってはじめてできることです。
疑われる場合は、整形外科の受診を促しましょう。

3.胸の痛み

胸の痛みでは、心筋梗塞を疑いましょう。
胸の痛みと言っても、肋間神経痛のようなジンジンするものから、精神的な不安などでドキドキするものまで、様々です。

心筋梗塞かを想定するために、どのような痛みが心筋梗塞であるかを知ることが大切です。

心筋梗塞の痛みの特徴は、
「胸をえぐられるような」
「火箸で刺されたような」
強い痛みです。

心臓はできるだけ早く血流を再開させることが生きるためのとても大切なポイントなので、必ず救急車を呼んでください。

なお、数十分〜数時間で痛みはおさまりますが、治ったわけではなく、心筋細胞の壊死が終息して痛みを感じなくなったからです。
迅速な治療が必要なことに変わりありません。

救命処置ができるように

万が一、最悪の事態が起きた場合、救急車が到着するまでに救命処置を行うことで、救命確率があがります。
救命処置を行えるように、日頃から練習をしておきましょう。
最悪の事態を想定することと同様、救命処置をおさえておくことで、冷静に対応できます。

詳細は、専門の団体がありますので、こちらをご参照ください。

ここに載っているBLSアルゴリズムを定期的に復習して自分のものにしておきましょう。

AED心臓マッサージBLS

変化に対応できるためのチェックポイント

ここまでは、最悪の事態を想定して、最悪の事態で行動できる準備を説明してきました。
ここを知ることはネガティブなことではなく、患者さんの命を守ることであるというイメージができたのではないでしょうか?
それを踏まえて変化に対応できるためのリスク管理のポイントを説明します。

結論から申し上げると、訴えることができる場合は、主訴に耳を傾ける、訴えることができない場合は、バイタルサインのチェックということになります。
それぞれわけて説明します。

症状の訴えが可能な症例に対して

症状の訴えが可能な場合は、主訴がとても重要です。
最悪の事態を想定する部分でも、それぞれ主訴から疾患を予想しています。
(脳梗塞→FAST、骨折→痛み、心筋梗塞→胸の痛み)

そのため、バイタルサインのチェックは、運動負荷を決定する意味で重要なものの、緊急事態の発見や対応は、主訴を逃さないことが大切です。

主訴をどう捉えるか。
ポイントは、3つです。

1.いつもと違う点を訴える
2.いつもと明らかに違う点がある
3.明らかに訴えが強い

脳梗塞ではMRI、骨折ではレントゲン、心筋梗塞では心電図やカテーテル検査を行わないと診断はできません。
そのため、ご自宅や施設ではそれを確定させることはできないのです。
それを踏まえた上で、それに近い症状を聞き逃さないことがとても重要です。

症状の訴えが難しい症例に対して

症状の訴えが難しい症例では、バイタルサインと客観的な評価が全てです。
バイタルサインは、生命を維持するためのサインです。
バイタルサインがいつも通りであるかをしっかりとチェックしましょう。

また、リハビリ後はバイタルサインが開始時と大きく異ならないかチェックをしましょう。
リハビリ後のバイタルサインの確認は、症状の訴えが難しい症例では必須です。

リハビリしたあとに状態が悪化していないことを確認する方法は、バイタルサインのチェックしかないからです。
バイタルサインから状態変化がないことを確認したら、客観的な評価を行います。

苦しそうな表情や発汗、皮膚の色、四肢の体温など、視診と触診から注意深く観察します。
同居しているご家族から、変化がないかを聞くこともとても大切です。

血圧測定バイタルサインのチェック

まとめ

本記事では、リスク管理のポイントをお伝えしました。
最悪の事態を想定すること、救命処置ができるようにすること、変化に対応するためのチェックを行うこと、の3つのポイントをお伝えしました。

大切なのは、最終的な診断や治療は、療法士は行なえません。
診断や治療を迅速に行えるためのサポートを行うことが主な役割です。

リハビリを行う際には、状態変化がつきものです。
慌てることなく、対処できるように普段から想像し、他職種や療法士同士でコミュニケーションをとってみましょう。

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