リハビリしても効果なし?!薬剤性パーキンソニズムの見極め方

最近歩けなくなってきた、ふらつきがみられるといった症状で、リハビリをはじめたけど、中々改善しないな。
この症状は、リハビリでは改善しないタイプの症状なのかな?
そのような場合、「パーキンソニズム」が頭に浮かぶかと思います。
一方で、改善しない理由をなんでも「パーキンソニズム」と考えるのは良くありません。
そこで、本記事では、頻度の高い重篤副作用と言われている薬剤性パーキンソニズムをご紹介します。

本記事は、以下のようなヒトに向いています。

  • 薬剤性パーキンソニズムは聞いたことあるけど、説明はできない
  • 薬剤性パーキンソニズムの症状は、なんとなくパーキンソン病の症状と思っている
  • 薬剤性パーキンソニズムは知っているけど、どんな薬が影響するかわかっていない

臨床で遭遇する機会も多い病態ですので、一緒に整理していきましょう。
まずは、薬剤性パーキンソニズムからみていきましょう。

薬剤性パーキンソニズムとは

薬剤師・医師

パーキンソン病と同じような症状を示す病態をパーキンソニズム(パーキンソン症候群)と呼びます。
パーキンソン病は、パーキンソンという医師が発見したため、このような病名です。

薬剤性パーキンソニズムとは、服用した薬の副作用によってパーキンソニズムの症状が出現することです。
ほんの少しの症状から出現することも多いので、薬の変化や症状の経過を注意深く観察しないと、薬剤性パーキンソニズムに気づけない可能性があります。

平成18年に厚生労働省から、重篤副作用疾患別対応マニュアル〜薬剤性パーキンソニズム〜が発表されました。
厚生労働省は、この副作用が重篤副作用の中に入っている理由を、以下のように述べています。

この副作用が重篤副作用の中に入っている理由は、必ずしも重篤になり生命に危険を及ぼすからではなく、非常に頻度の高い病態であり、神経疾患以外の治療過程にも出現して、長期間にわたり症状が持続してしまうことがあるためである。

重篤副作用疾患別対応マニュアル:厚生労働省,H18年.

症状の提示

症状のイメージを以下に示します。


【症例A様】
脳梗塞後遺症
使用薬剤:〇〇10mg
使用期間:75日

脳梗塞後遺症は軽度で、独歩が可能であった。

投与60日目 ヨチヨチ歩きとなり、独歩が困難の訴えあり。
投与75日目 歩行が全く不可能。〇〇の投与中止。
      投与中止により症状は改善。
投与中止60日間 投与前の状態に回復した。


このような経過をたどる患者さんのリハビリを行うとき、どのように解釈しますか?
ヨチヨチ歩きの原因を評価し、介入を実施すると思います。
介入を実施したのに、症状が変化しなかったら。
症状が変化しないとき、頭の片隅に薬剤性パーキンソニズムをいれておいて下さい。
薬剤性パーキンソニズムであれば、リハビリでは良くなりません。

それでは、具体的な症状をみていきましょう。

薬剤性パーキンソニズムの症状

パーキンソン病と区別がつかない症状を呈します。
具体的には、無動固縮振戦突進現象姿勢反射障害仮面様顔貌などの症状を呈します。
発現の初期では、動作が遅くなった、身体が固くなった、手が震える、歩き出すと止まれないことがある、歩きがふらふらする、表情が少なくなった等との訴えがあります。

パーキンソン病の新診断基準

パーキンソン病を、医師はどのように診断しているのでしょうか?
医師の診断基準を知ることは、目の前の患者さんの状態の解釈に重要です。
2015年に新たな診断基準がInternational Parkinson and Move-ment Disorder Society(MDS)から提唱されました。
これによると、パーキンソニズムは以下のように定義されています。

パーキンソニズムは、運動緩慢がみられることが必須であり、加えて静止時振戦か筋強剛のどちらか1つまたは両方がみられるものと定義する。

Postuma RB:MDS clinical diagnostic criteria for Parkinson’s disease.2015

これまでは、姿勢反射障害がパーキンソン病の症状と捉えられてきました。
しかし、この診断基準では姿勢反射障害を除外しています。
姿勢反射障害を除外した理由は、以下の2つです。

1つ目は、パーキンソン病の姿勢反射障害はほとんど進行期になってから出現すること
2つ目は、姿勢反射障害の早期出現はむしろ他疾患を示唆すること

学校では、姿勢反射障害が含まれることを習ったと思います。
そのため、臨床現場で以下のような疑問を持ったセラピストも多いでしょう。
「パーキンソン病のような症状だけど、姿勢反射障害がないから違うのかな?」
現時点では、運動緩慢が必須、静止時振戦筋強剛のどちらか1つがみられるものと定義されています。
上のような場合にも、パーキンソン病の症状である可能性があると言えるようになりました。

ここまでで、パーキンソン病の症状は理解できたかと思います。
パーキンソン病の症状か、薬剤性パーキンソニズムの症状かは、経過が重要なポイントです。
薬剤性パーキンソニズムの方が、以下の経過となりやすいです。

  • 進行がはやい
  • 突進現象が少ない
  • 対称性の症状が多い

症状と経過、この2つのポイントを参考にしてみてください。
つづいて、パーキンソン病のメカニズムをみていきます。

パーキンソン病のメカニズムをおさらい

運動緩慢さ

続いては、薬剤性パーキンソニズムが生じるメカニズムを説明します。
薬剤性パーキンソニズムのメカニズムを考える上で、パーキンソン病のメカニズムをおさえておいた方が良いです。
簡単にパーキンソン病のメカニズムを説明します。

パーキンソン病のメカニズムを考える上で、キーワードは、ドパミン線条体淡蒼球内節です。
ドパミンは、中脳黒質で合成されます。
合成されたドパミンは、線条体の働きを調整します。
線条体は、淡蒼球内節をほどよく抑制します。
淡蒼球内節は、随意運動を強く抑制する作用があるものの、線条体によってほどよく抑制されており、過剰な運動のみを抑制しています。

パーキンソン病では、中脳黒質が変性し、ドパミンの合成が行われません。
ドパミンの合成が行われないことによって、線条体の働きは調整されません。
線条体の働きが調整されないと、淡蒼球内節を抑制することができません。
淡蒼球内節は、線条体によってほどよく抑制されていないと、随意運動を強く抑制してしまいます。

このようなメカニズムによって、パーキンソン病の主症状である、運動緩慢さや安静時振戦、筋強剛が生じるのです。
パーキンソン病のメカニズムをイメージできたら、つづいて薬剤性パーキンソニズムのメカニズムをみていきます。

薬剤性パーキンソニズムのメカニズム

それでは、薬剤性パーキンソニズムのメカニズムを説明します。
パーキンソン病では、ドパミンの減少が原因と説明しました。
つまり、ドパミンの減少を引き起こす、またはドパミンを受け取る受容体を遮断する作用がある薬物がパーキンソニズムを生じる可能性があります。

ドパミンの減少を引き起こす薬物を服用することによって、ドパミンの減少がおきます。
ドパミンの減少によって、線条体の働きは調整できません。
線条体の働きが調整できないことによって、淡蒼球内節に抑制をかけることができません。

ドパミンを受け取る受容体を遮断する薬物を服用することによって、ドパミンの量は変わっていなくても、受け取ることができません。
ドパミンを受け取ることができないので、線条体の働きは調整できません。
線条体の働きが調整できないことによって、淡蒼球内節に抑制をかけることができません。

まとめると、薬剤性パーキンソニズムの原因となる薬物は、ドパミンの減少を引き起こす薬物とドパミンを受け取る受容体を遮断する作用がある薬物です。
以下で、具体的に原因薬剤をみていきます。

薬剤性パーキンソニズムの原因薬剤

薬剤

それでは、具体的にドパミンの減少を引き起こす薬物と、ドパミンを受け取る受容体を遮断する作用がある薬物をみていきましょう。

薬物の種類薬剤名主な商品名作用
抗精神病薬ハロペリドールセレネース®ドパミン受容体を遮断し、不安や緊張を和らげる。
消化器用薬メトクロプラミドプリンペラン®胃や十二指腸にあるドパミン受容体を遮断することにより、胃腸の運動を活発にする。脳の嘔吐中枢をおさえる。
抗うつ薬・消化器用薬スルピリドドグマチール®ドパミンの分泌をおさえて、脳の混乱を改善する。
抗認知症薬ドネペジルアリセプト®アセチルコリンの分解を抑制し、アセチルコリンの濃度を高めることで、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせる。

表の上から3つは、今まで説明してきた通り、ドパミンに関わる作用があることがわかります。
しかし、抗認知症薬として用いられているアリセプト®は、ドパミンではなく、アセチルコリンに影響を与えます。
今まで説明した機序とは違うので、ドパミンとの関係を補足します。

ドパミンとアセチルコリンの関係は、拮抗すると考えられています。
アセチルコリンが増えれば、ドパミンは減少する、ということです。

そのため、アセチルコリンを増やす作用がある薬物によって、ドパミンが減少した結果、パーキンソニズムが発現したと推測されています。
一方、近年パーキンソン病の解明は進んできており、アセチルコリンとドパミンの同調関係も疑問視されている意見もあるので、参考程度にとどめておいてください。

ただ、このアリセプト®以外にも、ドパミンとは直接関係ないにも関わらず、パーキンソニズムを発現させる薬物があります。
ガイドラインを添付しておりますので、詳細はこちらをご参照ください。

つづいて、薬剤性パーキンソニズムへの対策です。

薬剤性パーキンソニズムの対策

原因薬物が理解できたかと思います。
それでは、実際の対策です。

対策は、シンプルです。
原因薬の中止です。
中止困難であれば、ドパミン受容体遮断効果のより低い同効薬に変更します。
中止も変更も困難であれば、抗コリン薬(アセチルコリンを減らす→ドパミンを増やす)を併用します。

変更ができるのは、医師です。
薬の詳細を把握しているのは、薬剤師です。
ただ、実際の現場では症状を詳細に観察している、理学療法士が真っ先に発見する機会は多いです。
パーキンソニズムがみられた際、患者さんのおくすり手帳で服用している薬物を確認して、疑わしい場合は医師や薬剤師に相談しましょう。

まとめ

本記事では、薬剤性パーキンソニズムについて解説しました。
・パーキンソニズムは、運動緩慢が必須で、加えて静止時振戦か筋強剛のどちらか1つまたは両方がみられるものと定義されています。
・これらの症状がみられたら、患者さんのおくすり手帳から、ドパミンに関係するお薬が処方されているかを確認しましょう。

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