療法士は知らないと恥ずかしい!感度・特異度

今回は、感度と特異度をカンタンに説明します。
医療従事者にとって、検査の感度・特異度を勉強したことはあると思います。
カンタンに言うと、検査をして陽性と陰性を判断するときの確率のお話です。
100%正確に陽性を出せる検査はなく、どんな検査であっても一定数の間違いが検出される可能性があります。
正確性はどれくらいの割合なのかを表したのが感度と特異度です。

現在、新型肺炎コロナウイスルの検査である、「CPR検査」が話題になっています。
もちろん、検査の一つなので、例外なく感度と特異度があります。
メディアで色々な意見がでており、もっと検査する母数を増やした方が良いという意見や、陰性になった場合も再検査をした方が良いという意見も聞かれます。
これは、真実なのでしょうか?

医療従事者が中途半端な知識で間違った情報を発信することは避けなくてはいけません。
もちろん、新型コロナウイルスを最前線で治療、研究されている医師ほどの答えは持ってなくて良いと思います。
ただ、医療従事者として感度・特異度の視点を持っていることで、検査を客観的に捉えることができると思います。
勉強したことがない方にとっても分かりやすく書いておりますので、ご覧ください。

CPR検査・感染症

現象の捉え方

はじめに、現象の捉え方を復習しましょう。
例えば、理学療法士が認知機能の低下を疑い、リハビリ中に認知機能の検査であるHDS-Rの検査を行ったとします。
結果は、15点でした。
カットオフ値(陽性と陰性の基準値)は、20/21点のため、この患者さんは陽性です。

医師ではないので、診断はできないとしても、理学療法評価結果から解釈することはよくあると思います。
検査から単純な解釈は間違いを生じさせる可能性があります。
カットオフ値未満で陽性であるため、このヒトは「認知症」なのでしょうか?
そのときに、重要なのが下の図を常に頭に描くことです。

認知症非認知症
HDS-Rで陽性ab
HDS−Rで陰性cd

(a)HDS-Rで陽性で、実際に認知症である。
(b)HDS-Rは陽性であるものの、実際には認知症ではない。
(c)HDS-Rは陰性であるものの、実際には認知症である。
(d)HDS-Rで陰性で、実際に認知症でない。

評価の解釈は、簡単に二元論的には考えられないのです。
とは言っても、検査結果の陽性や陰性というデータは臨床推論を進めていく上で大変重要です。
ここでポイントとなるのが、感度と特異度です。

感度sensitivity

ある疾病を有するヒトにおいて、検査で陽性と判断される割合(真の陽性率)を指します。
もう少し分かりやすく説明しますね。
先程の認知症を例にします。

認知症を有するヒトが10名、非認知症のヒトが10名いました。
そのヒト達に、HDS-Rの検査を実施しました。
以下の表のような結果になったと仮定します。

認知症非認知症
HDS-Rで20点以下6名4名
HDS−Rで21点以上3名7名

この表から、感度を考えます。
認知症を有しているヒトで、陽性と判断される(HDS-Rが20点以下の)割合が感度です。
計算式で表現すると、
感度=真の陽性/(真の陽性+偽陽性)

ここでの真の陽性は、認知症を有していて、検査で陽性と判断されたヒトであり、6名が該当します。(表の赤線)
偽陽性は、非認知症にもかかわらず、検査で陽性と判断されたヒトであり、4名が該当します。(表の黄色線)

感度=6/(6+4)=0.6
%で表すと、0.6×100=60%
感度は60%と表されます。

ここで重要なポイントは、疾病を有するからといって、100%検査で陽性となることはほぼありえないということです。
理学療法評価において、感度をおさえておかなきゃいけない理由はここにあります。

特異度specificity

特異度は、健康なヒトにおいて、検査で陰性と判断される割合(真の陰性率)です。
先程の表をみてみましょう。

認知症非認知症
HDS-Rで20点以下6名4名
HDS−Rで21点以上3名7名

非認知症のヒトが、検査で陰性と判断される(HDS-Rが21点以上の)割合を指します。
計算式で表現すると、
特異度=真の陰性/(真の陰性+偽陰性)

ここでの真の陰性は、非認知症であり、検査で陰性と判断されたヒトであり、7名が該当します。(表のピンク線)
偽陽性は、非認知症にもかかわらず、検査で陽性と判断されたヒトであり、3名が該当します。(表の青線)

特異度=7/(7+3)=0.7
パーセントにすると、0.7×100=70%
特異度は、70%となります。

感度と同じく、陰性であっても、疾病を有している場合があります。
理学療法評価を行う時は、感度と特異度を踏まえて実施しましょう。

CPR検査はどうなの?

この記事は、特に療法士が感度や特異度を気にせず、CPR検査について不適当なことを述べるのを防ぐことを目的としているので、CPR検査の是非を議論するつもりはありません。
Twitterなどで、療法士等が「もっと検査した方が良い!」とか、「全員検査すべきだ!」みたいな意見が少しでも建設的になればと思ってます。

CPR検査の概論を考えてみましょう。
例えば、陰性になっても陽性の可能性があるから、何度も検査した方が良いという意見。
上述した通り、もし新型肺炎コロナウイルスに罹患しており、陰性になった場合(偽陰性)。
感度や特異度が100%でないことを考えると、2度めの検査を行っても再び偽陰性となる可能性があります。(もちろん、陽性となる可能性もあります)

また、国民全員検査すべきだという意見。
母集団が大きくなればなるほど、罹患していないにもかかわらず、陽性と判断される(偽陽性)数は大きくなります。
そうなると、病床確保や隔離の問題がより深刻になる可能性があるのです。

このような議論を行う場合には、二元論的な思考ではなく、4分割表を用いることをオススメします。

医師の問診

例題のHDS-Rが気になった方のために

これだけ例題でHDS-Rを出すと、実際の感度や特異度が気になった読者も多いでしょう。
ご安心ください。
ここでは、簡単に解説します。
HDS-Rの感度と特異度は、おそらくこの論文から検証されていると思います。
早速どうぞ。

HDS-Rにおけるカットオフポイントを20/21とした場合に、感度は0.90、特異度は0.82であった。

加藤伸司 他:改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の作成,老年精神医学雑誌,1991

比較的安定した数値であると言えます。
ただ、対象者の選定や人数など、不十分な点もありますので、詳しくは原著をご覧ください。
ここでは、重要なポイントを解説します。
ここで表される感度と特異度をイメージの表にします。

認知症100名、非認知症100名認知症非認知症
HDS-Rで20点以下90名10名
HDS−Rで21点以上18名82名

注)論文の実人数とは異なる

認知症の検査


検査は陽性で、非認知症のヒト(偽陽性)が10名、検査は陰性で、認知症のヒト(偽陰性)が18名いるということです。(赤線部分)
HDS-Rを検査したスタッフであれば、点数の結果と症状の相違を経験したことがあると思います。
「19点だけど、日常生活は問題ないな〜」
「22点あるものの、なんかあやしいな〜」
みたいな感覚はありませんか?

あって当然なのです。
たった1点で、はっきりと認知症だと断定できることはありません。
私達は、検査の結果は参考に、他の所見と合わせて判断していく推論能力が求められています。
現在行っている評価や検査の感度、特異度を一度見直してみてはいかがでしょうか?

本記事では、感度と特異度について説明しました。
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